メトロノーム練習が好きだという人は、あまり多くないかもしれません。あの無機質な「ピッ、ピッ」という電子音を聞いていると、まるで厳しい先生に監視されているような気分になります。音が鳴った瞬間に合わせようと必死になり、少しでもズレるとイライラしてしまう。これでは練習が苦行になってしまいます。
しかし、リズム感が良いと言われる人は、メトロノームを監視役ではなく「相棒」として扱っています。彼らはクリック音に合わせて演奏するのではなく、クリック音と一緒にグルーヴを作っています。今回は、そんな感覚を養うための少し変わった遊びを紹介します。機械的な音に合わせるという意識を捨てて、リズムの裏側を感じるゲームをしてみましょう。
今日の課題:音と音の「隙間」にある裏拍を感じる
初心者の演奏がどこかロボットのように聞こえてしまう原因の多くは、表拍(オモテ)だけでリズムを取っていることにあります。「1・2・3・4」というカウントの数字の部分だけでタイミングを合わせようとすると、演奏が点と点の連続になり、流れが生まれません。
大切なのは、数字と数字の間にある「・(アンド)」の部分です。日本語で言うなら「1・ト・2・ト・3・ト・4・ト」の「ト」にあたる部分。これが裏拍です。
今日の目標は、メトロノームの音を点として捉えるのではなく、その隙間にある裏拍を身体で感じること。これだけで、演奏に人間味と躍動感が生まれます。クリック音に追われるのではなく、クリック音の合間を縫って遊ぶ感覚を掴んでいきましょう。
やり方:クリック音を「スネアドラム」だと思い込む錯覚法
まずはメトロノームをBPM60程度に設定してください。かなり遅く感じるかもしれませんが、この隙間の広さが重要です。
ステップ1:裏拍で「ん」と言う
ギターを持つ前に、身体でリズムを取ります。メトロノームが鳴るタイミングで「1、2、3、4」と数えるのではなく、音が鳴っていない裏のタイミングで「ん」と声に出してみましょう。「(ピッ)ん、(ピッ)ん、(ピッ)ん…」という具合です。首を縦に振り、下がった時にクリック音、上がった時に「ん」を感じるのがコツです。
ステップ2:クリック音を2拍目と4拍目に聞く
これが今回メインの遊びです。通常は「1・2・3・4」と全ての拍でクリックを鳴らしますが、ここでは発想を転換します。メトロノームの音を、ドラムセットの「スネア(2拍目と4拍目)」だと思い込んでみてください。
つまり、「ウン(1拍目)、タン(2拍目クリック)、ウン(3拍目)、タン(4拍目クリック)」というリズムとして捉えるのです。こうすると、自分で1拍目を感じなければならないため、主体的なリズム感が養われます。この聞き方に慣れてきたら、簡単なコード進行やカッティングを合わせてみてください。驚くほど演奏がファンキーに聞こえるはずです。
NG例:目でタイミングを合わせる「視覚頼り」
メトロノーム練習で最もやってはいけないのが、振り子やランプの点滅を目で見てタイミングを合わせることです。これはリズム感のトレーニングではなく、動体視力の反射ゲームになってしまっています。
音楽はあくまで耳と身体で感じるものです。視覚情報に頼っていると、いざバンドで合わせる時や、譜面を見ながら演奏する時に、とたんにリズムが崩壊してしまいます。
また、クリック音に遅れまいとして、音が鳴るよりもほんの少し早く弾いてしまう「突っ込み」もよくある失敗です。これは音をよく聞けていない証拠でもあります。クリック音が鳴るのを待ち構えるのではなく、ゆったりとした円運動の中にクリック音が勝手に吸い込まれていくようなイメージを持ちましょう。焦る必要はありません。
録音して確認→次回:自分のリズムが「走っている」現実に気づく
この2拍・4拍の聞き方で練習した演奏を録音してみると、多くの人は自分の演奏がだんだん速くなっている(走っている)ことに気づきます。クリック音が鳴らない1拍目と3拍目を、無意識のうちに短く見積もってしまうからです。
録音を聞き返した時、クリック音と自分のギターがぴったり重なって聞こえるのではなく、クリック音とギターが会話しているように聞こえたら合格です。裏拍を感じられるようになると、同じフレーズを弾いても「玄人っぽい」雰囲気が漂うようになります。
最初は脳が混乱するかもしれませんが、この「リズムの遊び」を1日5分取り入れるだけで、右手の振りが見違えるほどしなやかになります。さあ、メトロノームを嫌わずに、ドラマーだと思ってセッションしてみましょう。


